中退共と企業型DCの違い
どちらを選ぶべきか

制度の比較

「退職金制度をつくりたい」というご相談で、必ず比較対象に挙がるのが中小企業退職金共済(中退共)です。どちらが優れているという話ではなく、会社が何を実現したいかで向き不向きが分かれます。違いが出るポイントを整理します。

※本記事は2026年9月時点で確認した内容にもとづく一般的な解説です。掛金の範囲・助成の内容・加入要件は変更されることがあります。制度の詳細は勤労者退職金共済機構等の公表資料でご確認ください。

ひと言でいうと

  • 中退共=会社が掛金を出し、国が定めた予定運用利回りで積み上がる、シンプルな共済制度
  • 企業型DC=掛金を従業員が自分で運用し、その結果が受取額になる年金制度

中退共は会社が負担して従業員に還元する制度、企業型DCは器をつくって従業員に選ばせる制度、と整理すると分かりやすいと思います。

比較表

比較項目中退共企業型DC
掛金の負担者全額事業主事業主拠出/選択制なら給与からの振替も可
会社の新たな支出必ず増える選択制なら増やさずに始められる
掛金の税務上の扱い全額損金算入全額損金算入
運用の責任国の制度側(予定利回り)加入者本人(元本割れの可能性あり)
受け取れる時期退職時(年齢を問わない)原則60歳以降
役員の加入できない(使用人兼務役員は可)厚生年金被保険者なら可
掛金の減額従業員の同意等が必要で難しい規約の範囲で見直しの余地あり
国の助成新規加入等で助成あり助成制度なし
導入の手間比較的簡易規約の承認申請等が必要(4〜6か月)
社員への説明簡単(会社が積むだけ)説明会が必須

※掛金月額の範囲、助成の内容・期間は変更されることがあります。金額は必ず最新の公式資料でご照合ください(要確認)。根拠:中小企業退職金共済法、確定拠出年金法ほか。

判断が分かれる3つのポイント

1. 会社が掛金を負担できるか

ここが最初の分岐点です。中退共は全額事業主負担が前提で、従業員から徴収することはできません。制度として分かりやすい反面、人数が増えれば固定費としてそのまま乗ってきます

「賃上げの原資も苦しい」という状況であれば、選択制の企業型DCのほうが現実的です。逆に、会社の姿勢として「こちらが積む」と示したいのであれば中退共が向きます。

2. 役員に退職金を用意したいか

中退共には事業主や役員は加入できません(使用人兼務役員は一定の要件のもとで可)。一方、企業型DCは厚生年金の被保険者であれば役員も加入できます

中小企業では、役員自身の退職金の準備を目的に企業型DCを選ぶケースが実際にあります。ここは明確な差です。

3. 「いつ受け取れるか」をどう考えるか

中退共は退職時に受け取れます。30代で転職しても、そのときに支給されます。対して企業型DCは原則60歳まで引き出せません

従業員にとっての魅力という意味では、中退共のほうが実感しやすい面があります。ただし「退職時に現金が出る」ということは、短期離職を止める力は弱いとも言えます。長期での資産形成を促したいなら企業型DCです。

併用もできます

中退共と企業型DCは併用が可能です。実際の設計としては、次のような組み合わせが考えられます。

  • 中退共で会社としての退職金の土台をつくる
  • そのうえで選択制の企業型DCを用意し、上乗せしたい社員は自分で積めるようにする

ただし、他制度があると企業型DCの拠出限度額の計算に影響が出ます。併用を検討する場合は、限度額の枠がどうなるかを先に確認してください。

どちらを選ぶかの目安

こんな会社には向いている制度
会社が掛金を負担でき、制度をシンプルにしたい中退共
従業員の在職期間が比較的短い業種中退共
新たな支出を増やさずに退職金の器をつくりたい企業型DC(選択制)
役員の退職金も同じ枠組みで準備したい企業型DC
長期勤続と資産形成を促したい企業型DC
土台と上乗せを分けて設計したい併用

なお、どちらの制度でも退職金規程の整備は必要です。制度に加入しただけでは社内ルールとして完結しません。支給要件、勤続年数の取り扱い、懲戒解雇時の扱いなどを規程に落とし込む作業が残ります。ここは社労士の領域ですので、あわせてご相談ください。

まとめ

  • 中退共は会社が全額負担、企業型DCは選択制なら支出を増やさず導入できる
  • 中退共は退職時に受け取れる、企業型DCは原則60歳以降
  • 役員は中退共に加入できないが、企業型DCは厚生年金被保険者なら可
  • 中退共には国の助成がある(内容は要確認)
  • 併用も可能。ただし拠出限度額の枠への影響を先に確認すること
  • どちらを選んでも退職金規程の整備は必要
シャローチくん

「うちにはどちらが合うか」からご相談ください

制度の比較検討から、退職金規程の整備、企業型DCの制度設計・承認申請・社員説明会・導入後の金融教育まで、社会保険労務士法人ビジネスパートナーが一貫して伴走します。