結論:併用はできる。制限が緩和されてきた
かつては、企業型DCの加入者がiDeCo(個人型確定拠出年金)を併用するには、規約にその旨を定めておく必要がありました。実際には規約に定めのない会社がほとんどで、併用したくてもできない状態が長く続いていました。
これが2022年10月の改正で見直され、規約の定めがなくても原則として併用できるようになりました。さらに2024年12月の改正では、他の企業年金がある場合の限度額の計算方法が変わっています。
根拠:確定拠出年金法および同法施行令。改正内容の詳細は厚生労働省・国民年金基金連合会の公表資料をご確認ください(要確認)。
限度額は「枠の中の取り合い」で決まる
ここがいちばん誤解されやすいところです。iDeCoの限度額は固定額ではなく、会社が出している掛金との合計で判定されます。イメージとしては、一人ひとりに決まったサイズの枠があり、会社の掛金が入った残りがiDeCoに使える、という構造です。
| 会社の制度 | 枠の全体 | iDeCoに回せる額 |
|---|---|---|
| 企業型DCのみ | 月5.5万円 | 枠の残り。ただし月2万円が上限 |
| 企業型DC+確定給付企業年金(DB)等 | 月5.5万円 | 枠から会社掛金と他制度分を引いた残り。ただし月2万円が上限 |
| 企業年金なし | — | 月2.3万円 |
※上記は2026年8月時点で確認した枠組みです。金額・計算方法は改正により変わるため必ず最新の公式資料でご照合ください(要確認)。
つまり、会社が出している掛金が多いほど、その社員がiDeCoに回せる額は小さくなります。会社掛金が枠を埋めきっている場合は、iDeCoに回せる余地がないこともあります。
また、2025年に成立した年金制度改正法により、拠出限度額の引上げが予定されています。施行時期と金額は本記事の執筆時点で確定情報として扱えないため、必ず最新情報をご確認ください。
マッチング拠出とiDeCo、どちらを選ぶか
会社がマッチング拠出(従業員が自分の給与から会社掛金に上乗せする仕組み)を導入している場合、従業員はマッチング拠出とiDeCoのどちらかを選べます。両方は使えません。
| 比較項目 | マッチング拠出 | iDeCo併用 |
|---|---|---|
| 掛金の支払い方 | 給与天引き | 本人の口座から引き落とし |
| 所得控除の手続き | 会社の年末調整で完結 | 本人が申告(年末調整で可) |
| 運用商品 | 会社が選んだラインナップ | 本人が金融機関を選べる |
| 口座管理手数料 | 会社負担が一般的 | 本人負担 |
| 拠出できる上限 | 会社掛金を超えられない | 会社掛金の額に左右されない(枠内で) |
会社掛金が少額の場合、マッチング拠出は「会社掛金を超えられない」という制約が効いてしまい、あまり積めません。そのケースではiDeCoのほうが従業員にとって使い勝手がよいことがあります。どちらが有利かは一律には決まりません。
会社側の実務で押さえること
1. 事業主証明書の取り扱いが変わりました
従来、従業員がiDeCoに加入する際には会社が「事業主証明書」を発行する必要があり、担当者の事務負担になっていました。2024年12月の改正でこの取り扱いが見直されています。現在の運用がどうなっているかは、運営管理機関または国民年金基金連合会にご確認ください(要確認)。
2. 「会社が加入させる」ものではありません
iDeCoはあくまで従業員個人の制度です。会社が加入を勧奨したり、特定の金融機関を指定したりすることは適切ではありません。制度の存在と限度額の仕組みを情報提供するところまでが、会社の立ち位置です。
3. 説明会では「限度額は人によって違う」と伝える
社員説明会で「iDeCoは月2万円まで入れます」と言い切ってしまうと、後で食い違いが出ます。会社掛金の額や他制度の有無で変わるため、個別の金額は運営管理機関の試算で確認していただくのが安全です。
選択制を導入している場合の注意点
選択制の企業型DCでは、給与の一部を掛金に振り替えます。この掛金も「会社の掛金」として枠を消費します。選択制で上限近くまで拠出している社員は、iDeCoに回せる額がほとんど残らないこともあります。
「選択制で積んで、さらにiDeCoでも積みたい」というご相談は実際にありますが、枠は共通であり二重には使えません。ここを誤解したまま両方の手続きを進めると、後から拠出額の修正が必要になります。
まとめ
- 企業型DC加入者でもiDeCoは原則併用できる(2022年10月改正以降)
- iDeCoの限度額は固定ではなく、会社掛金との合計で枠内に収まる範囲で決まる
- マッチング拠出とiDeCoはどちらか一方のみ。会社掛金が少額ならiDeCoが有利な場合も
- 選択制の掛金も同じ枠を消費するため、二重には積めない
- 金額・手続きは改正が続いている領域。個別金額は運営管理機関の試算で確認を